毎日の文トレ

日々感じたことや考えたことを書き殴ります。

大分麦焼酎いいちこ

この前、友達から貸してもらった東村アキコの『かくかくしかじか』を読んだ。

作者が漫画家になるまでを描いたマンガエッセイで、すごく読みやすく一気に読み、5巻のあるシーンで一気に泣いた。

 

その中で、日高健三という超スパルタ美術教師という人物が出てくる。非常に厳しいが、本質を付いていて、実はかなり優しい人という性格の人だ。こんな人が出てきた瞬間に、高校の美術教師を思い出した。

 

僕が高校生だったときにはすでに60歳くらいだったが、毎日テニスコートで汗を流すくらいのスポーツ好きで、腕相撲が強く、テニス部の男くらいなら簡単にひねることができる人だった。おじいちゃんのふりをした若い男のような印象だった。絵も描けるし、スポーツもできるという二刀流のすごさに惹かれて、僕はよく美術室に顔を出すようになった。

 

吹奏楽部に入っていたので、普段どんな音楽を聞くのか尋ねると「くらっちっくとモダンジャズしか聞きません」と言われ、いろんなジャンルの曲ばっかり聴いてた僕は、二つだけしか聞かないってのはかっこいいと思い、モダンジャズにはまって行くきっかけにもなった。

 

美術室に入って何をしていたかというと、本棚にあった大量の「藝術新潮」を読み漁っていた。当時美術の知識も全くなかったのだが、綺麗なカラー印刷された絵画や彫刻、版画、風景を眺めているだけで、高校生活のつまらなさから解放された気がした。

 

かなり読み応えのある雑誌なのだが、毎回楽しみにしていたのは、裏表紙にある「大分麦焼酎いいちこ」の広告だった。

 

随分前から同じコンセプト続けている広告で、毎回色々な素材を用いて、いいちこのボトルのフォルムをもじるデザインの広告だった。もうそれは広告でありながらも、芸術作品だと思っていた。

 

ナポリタンとか柿の種だとか餃子だったりとか、とにかく多種多様な素材を使っていて、当時の僕はそのアイディアの斬新さ、新鮮さに毎回驚かされた。(今、ググってみると食べ物を使ったものしか出てこないんだけど、食べ物以外のパターンもあった気がする)本当に貪るように読んでいたので、件の教師からは「もう美術部に入れ。部費を収めろ」と言われていた。

 

今、振り返ってみたときに、僕の広告への興味、面白いアイディアへの興味は藝術新潮で養われたのかと思うと非常に感慨深い。

 

いいちこに感謝である。焼酎は苦手で、全く飲まないのだけど。