骨から分かった事実
トレイルランにはまって、隙があれば大文字山に登っていた頃、あるトレイルランのレースにて、右足首を捻挫したことがあった。
比叡山のバプティスト病院がある登り口から入って、延暦寺を通り抜け、大原まで降り、金毘羅山を登り、京都造形大の裏手にある瓜生山へぐるっと戻ってくるハードなレースだった。確か全長で43km山道を走り続けた。
朝9時ごろにスタートして、ゴールしたのがその6時間後くらいだったと思う。ゴール直前の下り坂で、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえたので、抜かされたくないという一心で、ラストスパートをかけた時だった。勇み足で、焦ってスピードが制御できず、ちょっとしたカーブで盛大に足首をグネッたのだ。軽くひねったレベルではなく、後ろから追っていた人からすると、足首が折れたのかという割れるくらい内側にひねっていたそうである。その場は、アドレナリンも出ていたので、あまり痛みを感じなかったのだが、その日の晩から強烈に痛み始め、右足で地面を蹴ることすら難しい状態であった。
病院で湿布とサポーターをもらい、安静にしていたら、まっすぐ歩けるようにはなったのだが、それ以降は、頻繁に足首を捻るようになった。足首の靭帯が緩んでしまって、もう元には戻らないようなのだ。なんてことのない下り坂で自分でもびっくりするくらい捻挫した時は、もうトレイルランはダメだなと思った。
そんなある時、研究室のCTスキャンで足を撮ってみようと思った。ちょうど二足歩行について興味があったので、いい機会だと思ったのだ。
自分の足のCT画像を見ていると、腓骨というくるぶしの骨の一部がどうやら欠けていて、下の方にその破片みたいな小さくて丸い骨があるのを発見した。なんだこれはと思って、教授に聞いてみると、それは昔骨折をした痕だと教えてもらった。
そんな骨が折れるほどの骨折した経験は少なくとも記憶にはないぞと思ったのだが、生活費の催促電話のついでに、母親に尋ねてみた。
すると、小学校に入る前に公園で自転車の練習をしていた時、うっかりと後輪のスポークとスポークの間に右足を挟んでしまい、そのまま足を捻ったことがあると聞かされた。なるほど、もしかすると右足の靭帯が緩んだのは、このころの影響もあったのかもしれない。
僕は非常に驚き、謎がスッキリと解決されたことに興奮した。こういう知的興奮のために、研究者は知的探求を続けるのでしょう。