毎日の文トレ

日々感じたことや考えたことを書き殴ります。

ヌートリアおじさん

今日はヌートリアおじさんの話をしようと思う。

 

ある夏、鴨川を深夜に散策していた。彼女と深夜の鴨川は涼しいし、ひっそりしていていいね。みたいな話をしていた。出町柳駅のすぐ横にある加茂大橋の北あたりにあるベンチにおじさんが座っていた。こんな時間に何をしてるんだろうと思って、少しスピードを落としつつ通り過ぎようとすると、向こうから話しかけられた。

「なあ、そこのコンビニで食パン買ってきてくれへんか」

「え、いいですけど、なんでですか?」

ヌートリアに毎晩餌あげてんねん」

 

ヌートリアと言うと最近鴨川に住み着いた外来生物で、駆除の対象になっている。そんな動物を餌付けするなんて。と生物学をかじった学生ながらに思ってしまったが、面白そうなので近くのコンビニまで食パンを買いに行った。ファミマの安っぽい食パンをおじさんに渡すと、「見とけよ」というセリフと共におじさんはベンチから立ち上がり、口笛を吹き始めた。フィヨフィヨフィヨフィヨ。と言った感じだ。口笛を吹き始めてから20秒後くらい、川の方がバチャバチャと騒がしくなってきた。すると、中から大小のヌートリアが5匹くらい現れ、岸を登ってきた。おじさんは食パンを小さくちぎり、自分の足元に投げた。ヌートリアの子供がそれめがけて、おじさんの足元でちょろちょろと踊り出す。ヌートリアは見かけは大きめなネズミなので、尻尾が月夜に照らされてテロテロと光っているのが相当気持ち悪かった。

 

「なんでこんなことやってるんですか?」

「俺はな、昔は普通に働いてたんやけど、仕事が嫌で鬱になって、やめてもうたんや。そんで、毎晩酒を飲むようになったんやけど、心は全然回復せんかってん。ある時、鴨川でヌートリアを見かけて、めっちゃ癒されたんや。だから、毎晩ここに来てヌートリアに癒してもらってんねん。俺が餌あげてること誰にも言ったらあかんで。」

「なるほど・・・(これはあまり踏み込んだらあかんやつや・・」

 

と言う会話をして、ヌートリアを堪能し、僕たちは解散した。おじさんに話すなと釘を刺されていたが、この話は鴨川のヌートリアの話になると、必ずしている。ただ、感想として、「ほんまなん、それ」「嘘やろ」「そのおじさんがお前っていうオチなのでは」「そもそも、普段から嘘か本当か分からん話ばっかりするから、信ぴょう性がない」と全く取り合ってくれない。

 

これ、ほんまの話なんすよ。