毎日の文トレ

日々感じたことや考えたことを書き殴ります。

気の利く男

僕の高校は荒れていたので、よく殴り合いの喧嘩が行われていた。

文化祭で発表するダンスの練習を一部の男子がふてくされながらやっていたところ、キレやすい友達が、謎の正義感を発揮して殴りにかかった。殴られた方の男子は、韓流スター気取りの細身でなかなかにかっこいい奴だった。殴った方は、親が暴力団関係者だとか噂が流れるくらいのいかつい男で、普段は温厚なのだが、何か気にくわないところがあると、すぐに暴力を振るうような奴だった。ある時、そいつが履いている靴を褒めたら、喧嘩を売っているのと勘違いしたらしく、二発くらい殴られたのを覚えている。

 

話を戻すと、その暴力男が韓流男を殴り、思いっきり太ももを蹴り上げ、ダンスの練習に集まった30人くらいがアタフタした瞬間のことだった。喧嘩に気づいた数学の教師がその間にスッと入り込み、「落ち着け落ち着け〜」と言いながらコミカルな振り付けで踊り始めた。声がちょっと震えていたので、軽い緊張は伝わってきたのだが、効果はテキメン。一瞬でギスギスした空気が吹き飛んだ。喧嘩に関わった奴らはすぐに解散させられ、ダンスの練習は続けられた。

 

この時、僕は「気が効く男ってこういう人のことをいうんやな」と思った。声には出されていないのだけれども、誰かが何かを必要といて、瞬時に察知して、それを提供することができる。変なプライドも持っていない。その先生は、授業中に自分はモテるとは言っていたけども、この一件で、確かにそうなんだろうなと納得した。

 

かっこ悪いけど、かっこよかったな。